『なんということだ……』
思いもよらぬ事態に、<主人>は焦っていた。
『申し訳ございません、ご主人様。よもや、あの少年のネットナビに見破られてしまうとは』
<しもべ>も、信じられないと言った口調で<主人>に詫びる。
「むうう…………仕方あるまい。行けっ、我がしもべよ! あの少年を絶対にこの部屋に入れさせるな!!」
『はっ、御意のままに……!』
主の命令を受け、<しもべ>は文字通り飛び去った。
「ビンゴだぜ……これで家中のドローンやホログラムを操っていたってわけか」
暖炉の上に置いてある大きな箱状の物――無線LAN本体を調べていた熱斗が、にやりと笑う。
『この装置、プラグインできるよ熱斗君』
ロックマンが言ったそのとき。
『ふはははは、ようこそ我が屋敷へ!』
何者かの声が無線LAN本体から、部屋中に響き渡った。
「誰だっ!?」熱斗が叫ぶ。
『我が名は”ミラージュマン”! 恐怖と悪夢を司る《幻影の魔王》なり!!』
「お前がこの事件の犯人ってわけか…………!」
『いかにもその通り! 我が主の命令により、お前たちをここで消去する!!』
「何が《幻影の魔王》だ! みんなを酷い目にあわせやがって!」
熱斗が怒りを露にして、叫んだ。
『熱斗君!』「おう!」
熱斗はうなずき、PETから接続ケーブルを取り出す。
「いくぜロックマン!
プラグイン! ロックマンexe.トランスミッション!!」
ケーブルの接続端子が、無線LAN本体のプラグインジャックに差し込まれた。
ロックマンが無線LAN本体の電脳世界に降り立つと、そこには一体のネットナビが待ち構えていた。
「お前がミラージュマンか?!」
「いかにも!」
ロックマンの問いに、中世の騎士を思わせる鎧姿のナビ――ミラージュマンがうなずく。
全身にまとったその鎧は、鏡のような光沢をまとっている。
「ロックマン、我が必殺のミラージュホロゥ>とくと味わうがよい! 覚悟!」
そういうなり、ミラージュマンの姿がふっ……と消えた。
「えっ!?き、消えた?」
慌てて周囲を見回すロックマン。
と、その刹那。
何枚もの大きな鏡が出現し、ロックマンを取り囲んでいた。
「か、鏡!?」
戸惑いつつもバスターを鏡に向けて連射するが、
ガキン! ガキン!!
空しくはじかれてしまう。
「バスターがきかない?!」
「ふははーーーー! そんな攻撃で我が鏡は壊れぬ! くらえ、<ミラージュブレイド>!!」
ミラージュマンの声とともに、鏡の中から無数の剣が飛び出し、ロックマンに襲い掛かった。
「うわーーーーっ!!」
ロックマンの全身に銀の剣筋が走り、次から次へと傷を刻み込んでいく。
反撃を試みようにも、剣に跳ね除けられてしまう。
『ロックマン!!』
熱斗の声が電脳世界に響き渡る。
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