「タシ! 無事だったのね!」
ルージュの声が頭上から聞こえる。
僕はびっくりして上を向いて見ると、空飛ぶ絨毯に乗った美しい女性が僕を見つめていた。
……そう、例えるならその姿は紅蓮の炎の髪をなびかせる女神のよう。
「ル、ルージュ!? その姿は?」
「細かい説明はあと。ほら、あれを見て!」
何がなんだかわからない僕に、ルージュは目の前の巨大な影を指さす。
それはなんと、十メートル以上もありそうな恐ろしく大きな雷魚の化け物であった。
全身が真っ黒く堅そうな鱗でびっしり覆われていて、目と目の間には黒い宝石みたいなものが光っている。
「な、何あれ!?」
「あいつが邪気の正体。雷魚たちを操り河イルカたちを傷つけたのはあいつの仕業だったのよ!」
「何だって!?」
僕は飛び上がらんばかりに仰天した。
「さぁ、あいつは私たちに任せて、あなたは早く安全な所へお逃げなさい!」
「で、でも……ルージュ」
「いいから早く!!」
ルージュに叱咤され、僕はイルカの背に跨って河岸へ急ごうとした。
が、多数の雷魚が僕たちめがけて襲いかかってきた。
「このこのっ! 来るなってば!」
僕は必死で腕を振り回し追い払おうとしたが、雷魚たちはしつこく群がってくる。
みるみるうちに僕とイルカは傷ついていく。
このままでは河岸に着く前に、雷魚に食われてしまう。そう思ったその時ーーー
「乱れ斬刀!!」
どこからか竜馬の声が轟いた。
と同時に、無数の三日月状の光の刃が次々と雷魚を斬り裂いていく。
「タシ、大丈夫か!?」
刀を手にした白銀の鎧武者が現れ、呆気にとられている僕を抱き抱えた。
「その声……竜馬? 竜馬なの? 無事だったんだ!!」
「心配かけてすまんきに。さ、今のうちにはよ岸へ」
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