聖なる河 (後編)

 だが、次に僕の目の前に飛び込んできたものは、意外な光景だった。
 
 あと一歩でルージュを飲み込もうとした怪魚の様子がおかしい。
なんだか苦しそうに巨体をよじらせ、バシャバシャ暴れている。
すると、ウロコがポロポロと剥がれ落ち、腹に裂け目が走ったかと思うと何かが中から飛び出してきた。

 なんとそれは、竜馬だった。
白銀の鎧は、返り血を浴びて真っ赤になっている。

「竜馬!」
「ルージュ、今ぜよ! 奴にとどめを!」
「わかったわ!」

 竜馬の叫びに応えて、ルージュが両手を挙げる。
たちまち頭上に大きな火の玉が現れ、それを怪魚めがけて放つ!

「……………………………………灼熱の罠!!」

 間髪入れずに怪魚の体を数本の火柱が貫く。

ザバーーーーンン!!

 怪魚はあっという間に炎に包まれ、凄まじい水飛沫とともに河の中へ沈んでいった。
元の姿に戻ったルージュと竜馬、そして僕は何も言わず、ただただ怪魚の最期を見届けていた……。