#1 幽霊屋敷のうわさ

「よぉーし! それじゃあ、みんなでそこの幽霊屋敷へ行って、確かめにいってみようぜ!
 そうすりゃ、噂が本当かどうかわかるはずだぜ」
『おおっ、それはナイスアイディアでガス! さすがデカオさまでガスっ!!』
 デカオが名案とばかりに、目を輝かせて言った。
ナビのガッツマンも、主人の提案に大きな手を叩く。

「何バカなこと言ってんの。カワグチ・ヒロシ探検隊の番組じゃあるまいし。ハイテク全盛のこの時代に、『幽霊』とか『お化け』だなんて非常にナンセンスな話よ」
「何だとぉ、やいと!」
 やいとの冷めた発言に、デカオが顔を真っ赤にして食いかかる。
「それじゃ、もし本物の『お化け』が出たら、アンタどうするのよ?」
「そんなの心霊写真を取るに決まっているじゃん! 本物の心霊写真が取れるチャンスなんて、めったにねぇよ! 写真が取れたら、俺たち一躍有名人じゃないかよ?」
「はぁー、アンタってばとことんおめでたい奴だわねぇ。
 お化けが「ハイそうですか」って、そう簡単に写真を取らせてくれるわけないじゃない」
「なっ…………」
 やいとに対してデカオが反論しようとしたそのとき、

「二人ともまたケンカしてるの?」
「透!?」
 熱斗は振り返って、背後の声の主の名前を呼ぶ。
そこには隣のクラスの氷川透が立っていた。
「はい、熱斗。借りていたホラー漫画、返すね。とっても面白かったよ」
「おっ、サンキュー」
 透から一冊の漫画を手渡される。

「あら、それって『妖部あやしべバケル』の新作じゃないの?」
 メイルが熱斗が持っている漫画の表紙をみる。
『『妖部バケル』って…………?』
『今、大人気のホラー漫画家よ。すっごく怖いって、評判になっているの』 
 ロックマンにロールが説明する。
「そうそう、特に登場人物の驚いたり怖がったりする表情の描写がすっごくリアルで怖いんだよね」
「あたしも、新作が出たらすぐに買って読んでいるの」
 透とメイルがうなずきあう。
「あたしなんか、毎日ホームページをチェックしているわよ。単行本だって全部コレクションしているのよ。もちろんデビュー作の『死霊のコサックダンス』もゲット済みよ」
やいとも自慢げに話す。
『ふーん、そうなんだ。
 道理で最近熱斗君がやたら部屋の壁のしみを気にするなぁって思ってたら、そういうわけなんだ』
ロックマンが納得したような顔でうなずいた。
「えっ?そうなの?」と、メイル。
「わっ、バカ! 余計なことを言うんじゃねぇよロックマン!!」
熱斗は顔を真っ赤にして、慌てて否定した。

「おおい、そんなことはどーでもいいから、今夜みんなで幽霊屋敷へ行ってみようぜー。
 明日日曜日だからさー!!」
 すっかり蚊帳の外に追いやられたデカオが、なんとかしてみんなの関心を再び自分のほうへ向けようと、必死になるが、そんなデカオをよそに、熱斗たちはすっかりホラー漫画の話題に夢中になっていた。

「だぁーっ、聞けー俺の話をー!! んがー!!」