「しかしまぁ、まさか犯人があの『妖部バケル』だったとはねー」
やいとが信じられないといった顔で、紅茶を一口飲む。
「本当、俺も驚いたぜ、お化けの正体には」
デカオもうんうんとうなずく。
あれから数日後、熱斗たちいつものメンバーは、やいとの家の庭の東屋でのんびりティータイムを楽しんでいた。
「まったく人騒がせな話でマス。あ、メイドさん、紅茶のおかわりたのんマス」
なぜか日暮も話の輪に入っている。
『妖部バケル』こと獄怨寺はな子は、今も警察で取り調べを受けている。
押収された彼女のパソコンとPETからは、大量のデジカメ写真のデータが見つかった。
しかも、その写真はいずれも驚愕と恐怖の表情を浮かべた人間の顔のみが映し出されていたものばかりであった。
彼女の供述によると、ミラージュマンと超小型ドローンを使って他人を驚かせ、そのときの表情をデジカメで隠し撮りしたものを資料に漫画を描いていたという。
ちなみに、犯行現場に使われた洋館は彼女が曽祖父から相続されたものだそうだ。
「熱斗たちがとっ捕まえてくれなかったら、今頃俺の驚いた顔が漫画雑誌に載っていたかもしれないなー」
デカオが複雑といった表情をしながら、輸入物のクッキーをボリボリむさぼっていく。
「あんたの顔は、どっちかというとお化けっぽいわよ」
「んだとーコラーー!!」
やいとのつっこみに、デカオが抗議の声を上げる。
『………………』
「? どうしたの? ロール」
PETの中のロールの顔が冴えないことに、メイルが気づく。
『…………あのね、今考えていたんだけど、デカオくんたちを見つけたとき全部で5人いたよね?』
「ああ、そういやそうだったな。それがどうしたんだよ?」
熱斗がいぶかしげに言う。
『でも…………私がスキャンしたとき、生命反応は『4つ』しかなかったのよ……』
ロールが青ざめた顔でつぶやいた。
『えっ? ロ、ロールちゃん…………ソレってまさか……』
ロックマンが口を金魚のようにパクパクしながら問いかける。
『ええ、間違いないわ。
あとで気になってケロさんのトードマンに聞いてみたら、ケロさんたちを探しにいったスタッフの人は男の人だって』
ロールは話し続ける。
『それと、あの時のスタッフの中に…………ケロさん以外の女の人は一人もいなかったそうよ』
「……………………………………え!?」
その刹那、その場に居た全員が凍りついた。
「そそそ、それじゃあ…………俺たちが見たあのメガネの女の人は…………一体誰だったんだ?」
熱斗は、顔を真っ青にしながらつぶやく。
が、誰もその疑問に答えない。いや、答えることができなかった。
さて、これをご覧になられている諸君。
インターネットが発達し、電脳世界を擬似人格プログラム―――ネットナビが闊歩する時代になっても、怪談話や不思議体験談はどうやらどっこい健在であるようだ。
そう、たとえば……こんな世にも奇妙な物語が。
<完>
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