#3 デカオがいなくなった!?

「あっしは確かに、この目でしかと見たでマス!!
 絶っっ対『アレ』は夢とか幻ではありませんでマスッッ!!!」
「と、とにかく落ち着いてよ、日暮さん」
 興奮してまくしたてる日暮を、熱斗は必死になだめた。
 
 日暮が顔面蒼白になって光家に転がり込んてきたのは、ちょうど夕食が終わった時のことであった。途中で転んだのだろうか、すっかり全身砂埃すなぼこりまみれになってしまっている。
「まぁまぁ、日暮さん。 これを飲んで落ち着いてくださいな」
日暮の様子をみかねて、ママが暖かい紅茶を差し出す。
「あ、ありがとうございマス…………」
そういって、日暮はティーカップを受け取り、一口飲む。

「………本当に見たの? 『お化け』を」
「ええ…………しっかりと見ましたでマスよ」
 熱斗の問いに、紅茶を飲んで落ち着いてきた日暮がうなずいて答える。
「あの屋敷の玄関のところで、なんかボーーッとした光がだんだんと集まってきて、それが人の形になって…………ああ、思い出すだけでも恐ろしいでマス」
日暮は顔を両手で覆い、ガクガクブルブルと震えた。
『ナンバーマン、君もその『お化け』を見たの?』
 ロックマンは、ナンバーマンに聞いた。
『いいえ、私ははっきりと見てはいませんが、『子供の声』みたいなものを聞きました』
『子供の声?』
ロックマンの言葉にナンバーマンはうなずき、
『ええ、光が現れる前と日暮さんが気絶する前に、微かでしたが確かに聞こえました。
 前者はくすくすと笑う声で、後者は『遊ぼう』と。どちらも子供の声でしたよ』
 
『…………………………』
「…………………………」
 熱斗とロックマンは、何も言えずに顔を見合わせた。

 と、そのとき。

ピリリリリ………………

 突如、熱斗のPETからアラームが鳴り響いた。
「うわっ!?」
 熱斗はドキッとしたが、すぐに気を取り直し、通信ボタンを押して通話モードに切り替えた。
『もしもし?』
『あ、熱斗兄ちゃん!』
 相手は、デカオの弟チサオであった。
「チサオ? どうしたんだ、こんな遅くに電話してきて?」
『あのね、うちの兄ちゃん、熱斗兄ちゃんのおうちに今来てない?』
「デカオ? いいや、家に来ていないけど?」
 そこで熱斗は、チサオの口調にただならぬものを感じた。
「デカオが…………どうかしたのか?」
『兄ちゃんが、兄ちゃんがまだおうちに帰ってこないんだ……』
「な、なんだってーー!?」
 熱斗は驚き、叫んだ。
その隣で、日暮がびっくりしてソファからずり落ちる。