#4 突入! 噂の幽霊屋敷

 さすが屯田兵氏の運転だけあって、あっという間に何事もなく例の『幽霊屋敷』の前に到着した。
「ここが噂の『幽霊屋敷』か……あれ?」
 ベンツから降りた熱斗は、屋敷の前の道路にTV局の中継車が止まっているのに気づいた。
車の周りには、数人のスタッフが心配そうな表情で屋敷を見上げている。

「あの…………何かあったのですか?」
 メイルが、その中の一人に尋ねる。
「あ、いや、それがね、俺たち番組の企画でここの取材に来ていたのだけど、 レポーターのケロさんとカメラマン二人が屋敷の中に入ったっきりずっと戻ってこないんだよ」
「え、ケロさんも?!」
 熱斗たちは、お茶の間で人気の有名レポーターの名前を聞いて目を丸くした。
「ああ、心配になって探しに行った奴もまだ戻ってこないし……」
「もうかれこれ3時間は経っているんだよ……どうしたのかなぁ? ケロさん……」

『…………熱斗君』
「ああ、わかってるさ。 中へ入ってみよう、ロックマン」
 熱斗は決意の表情を浮かべ、屋敷の門へ向かった。
「おじさんたち、俺たちがケロさんたちを探しにいってあげるよ」
「あ、君! 屋敷の中はどうなっているのかわからないし、危ないから入るのはやめたほうがいいよ!」
驚いたスタッフの一人が、慌てて熱斗を呼び止めようとする。
「大丈夫だよ、俺はこういう危ないことには慣れっこだから。それに、この屋敷の中には俺たちの友達も迷い込んでいるんだ」
 俺たちはそいつを助けにここへ来たんだよ、と熱斗は笑顔で手を振りながら、立派な石造りのアーチをくぐる。
「あ、待ってよ熱斗!」
「自分だけかっこつけているんじゃないわよ、光君!」
 メイルとやいとも慌てて、熱斗の後を追う。
 
 その場には、ぽかーんと呆気に取られた表情のスタッフたちと、
「お嬢様、お気をつけてください……」と、心配そうに祈っている屯田兵氏が取り残された。

ギイィィ………………

 大きな木製の扉がゆっくりと、不気味な音を立てて開かれていく。
そこは、広々としたエントランスホールであった。

「うひゃあ、結構広いなぁ……」
 熱斗は思わず感嘆の声を上げた。
「さすが、昔アメロッパ貴族が住んでいただけあってゴージャスな造りだわね。ま、うちの物置より狭いけど」
 やいとがさらりと言う。綾小路家のすごさが伺える発言である。
「でも、あっちこっち壊れていて、なんだか不気味な感じね……」
 メイルが熱斗の背後で、周囲を見回す。
かつて賑やかに華々しく来客を招きいれたであろう場所は、今ではそこかしこにクモの巣が張りめぐらされ、階段の手すりやシャンデリアにも埃がたくさん積もっていて、昔の面影を全く残していなかった。

「ああ、まるで遊園地のホラーハウスみたいだぜ。それはとにかく、早くデカオやケロさんたちを探さなきゃ」
 熱斗はそういって、手にしたペンライトで周囲を照らしながら、部屋へ足を踏み入れた。
メイルとやいとも、熱斗の後ろについて歩く。

『…………ご主人様、また3人ほど屋敷の中へ侵入してきました。今度は子供のようです…………』
 闇の中で、<しもべ>が<主人>に報告する。

『ほう、こんな夜遅くに子供が? そういえば昼ごろにも子供が一人、中に入ってきたな。
 もしや、そいつを探しにきたのかな?』
『いかがなされますか? ご主人様』
『そうだな…………』
 <主人>はしばらく考えた後、にやりと笑い、
 
『まぁ、なんにせよ、我らにとっては全くの好都合だ。
【飛んで火にいる夏の虫】とは、まさにこのことだな。
 …………我がしもべよ、そいつらを『丁重にもてなして』おやり。
 先ほどの女たちと同様に、存分に恐怖を味あわせてやるが良い。くくく…………』
『かしこまりました、ご主人様』
 <しもべ>が、恭しく頭を下げた。