ギシィ……ギシィ……ギシィ…………
一歩一歩進むたびに、床が不気味な音を立ててきしむ。
「おーい、デカオー!ケロさーん!」
「デカオくーん、ケロさーん!」
「どこにいるのよー! 無事なら返事してーー!」
三人は、周囲を見回しながらデカオたちの名前を連呼した。
『どう?グライド。 ガッツマンたちの反応、見つかった?』
『いえ、この部屋をくまなくサーチしてみましたが、それらしき反応は何も…………』
『デカオくんたちの体温も感じられないわ。ここには居なさそうね、ロック』
『…………そのようだね。別の部屋へいってみよう、熱斗君!』
「わかった」
ロックマンたちも原因不明の強い電波障害のせいでデカオのPETやガッツマンとの通信が取れない今、PETの電源やデカオたちの体温を熱源探知モードで部屋の中を一つずつサーチして調べていく。
が、一階だけでも20数もの部屋があり、探すのにかなり難儀していた。
「くそう、一体いくつ部屋があるんだか、この家は」
熱斗が悪態をつきながら、次の部屋のドアを開けた。
「うわあ………………」
入ってみると、そこは応接間らしい、広々とした部屋であった。
天井には華美な造りのシャンデリア、床にはすっかり色あせてはいるが、豪華な刺繍を施されたじゅうたんが敷き詰めてある。
なによりも熱斗たちの目をひきつけたのは、壁にかけられた数十枚の肖像画と、部屋の真ん中に置いてある古いピアノであった。
「うっひゃー、まるで学校の音楽室みたいだなぁ」
「バカねぇ、学校の音楽室にシャンデリアやじゅうたんなんてないわよ」
目を丸くして部屋を見渡す熱斗に、やいとがすかさずツッコミを入れる。
「このピアノ、古いけどまだ使えるみたいね……」
メイルがピアノの蓋を開けて、鍵盤にそっと触れようとしたとき。
♪ボロン、ボロロボン、ボロオオン!!
「きゃあっ!?」
「うわっ!??」
突如、ピアノの鍵盤が波のようにうねり、手も触れてもいないのに勝手にメロディーを奏で始めた。
それはまるで、透明人間がピアノを弾いているかのような光景であった。
「ピ、ピアノが勝手に!?」
「何!? 何なの、これ??!」
ショパンのピアノソナタ『月光』が流れる中、パニック状態になって熱斗に抱きつくメイル。
「あ…………あれ見て!」
やいとが震えながら信じられないといった顔で、壁を指差す。
壁にかけられてある数々の肖像画の中の顔が、次々と変化し始めていた。
あるものは渦巻状に歪んだり、またあるものは血のように赤い涙を流したり。
まさに奇怪としかいいのようない光景である。
「ど、どうなっているんだよ、これ…………」
メイルの肩を抱きながら呆然とする熱斗がつぶやく。
と、一番大きな肖像画の中から、なんと貴婦人の顔がろくろ首のごとく「にゅう」と大きく抜け出し、
…………ウフフフ…………
熱斗たちに向けて不気味に微笑んだ。
「キャアアアアアア!!」
「ウワアアアアアアアア!!!!」
「イヤァアアアアアアアア!!!!!」
その刹那、熱斗たちは絶叫とともに猛ダッシュで部屋を飛び出した。
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