『熱斗君!』
PETの中のロックマンが叫んだ。
「な、何だよ、ロックマン!?」
『何でもいいから、何か物をその首無し騎士の胸のところへ投げてみて!』
「え? そ、そんなこと急に言われても……」
『いいから早く! 僕の言うとおりにして!』
「何がなんだかわからねぇけど、わかった!」
ちょうど、前方に廊下の隅に高価そうな壷が置いてある。
ご都合主義といってしまえばおしまいだが、熱斗には考える余裕がなかった。
熱斗はそれを両手で抱えて立ち止まり、後ろを振り返る。
「これでも…………くらえっっ!!」
ありったけの力を込めて、ロックマンの指示通り壷を首無し騎士の胸めがけてぶん投げた。
ガッシャアアアァァーーーーーン!!
壷が胸に当たって粉々に砕け、首無し騎士が倒れた…………
と思ったら、その瞬間なんと首無し騎士の姿がフッ……と煙のように消えてしまった。
「何っ!?」
熱斗はもちろんのこと、メイルややいとも意外な光景に仰天した。
「ど、どーなってんだ?……これ」
信じられないといった顔で、熱斗が呟く。
「熱斗、これを見て!」
メイルが床に散らばった壷の破片を指さした。
見てみると、破片にまじってピンポン玉ぐらいの大きさの金属の球状のものが転がっていた。
「これは………………!?」
熱斗たちは、それを拾ってまじまじと見つめる。
よく見ると、小さなカメラとこれまた小さなラジコンのアンテナに似た金属線がついている。
『やっぱり思っていた通りだ。これ、超小型のホログラムプロジェクターつきのドローンだよ』
『どういうことなの?ロック』
ロールがいぶかしげに聞く。
『たぶん、誰かがどこかでそれを遠隔操作して、首無し騎士の立体映像で僕たちを驚かせていたんだ』
「どうして、それがわかったの?」
と、メイル。
『うん、ほんのわずかだけど、そのプロジェクターから電磁波をキャッチできたんだ。もっとも電波障害のおかげでそれに気づくまではちょっと時間がかかったけどね』
「……ってことは、さっきの応接間のアレも今までの幽霊騒動も、その装置の仕業ってわけ?」
『ピアノは自動演奏できるものを古いものにみせかけたと、いうことですね…………』
ロックマンの説明に、やいととグライドが納得したような顔をする。
「…………ふざけやがって!」
ガツン!!
熱斗が怒りを露にして、壁を殴った。
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