#9 思わぬ好敵手の登場

ジャキィィィーーーーン!!!

「??!!」
 熱斗が見たものは、全身が欠片に突き刺さったロックマン……ではなく、
 
 彼の前に立つ赤い影――――ブルースであった。
欠片は、彼が構えているシールドに阻まれている。

「………………ブ、ブルース?」
<き、貴様は……あのオフシャル…………ネットバトラー……伊集院炎山の!??>
 思わぬブルースの出現に、驚愕の声を上げるロックマン。そして、ミラージュマンの声。
 
「いかにも…………」
 ブルースが無表情に答える。
そして、間髪入れず右手のソードを素早く降り下ろす。

<うがあああああああーーーーっ!!!!!>

 断末魔の叫びとともに、ミラージュマンの欠片が一斉にソードに砕かれ消滅していった。
「ふん…………《幻影の魔王》を名乗るわりには、たいした相手ではなかったな」
ブルースが冷たくつぶやきながら、ソードを収める。

「え、炎山!? 助けにきてくれたのか?!」
 熱斗も、思わぬ好敵手の出現に驚いていた。
「ふん…………勘違いするな、光。
 俺たちはただ、この屋敷の調査に来ただけだ。別に貴様たちを助けに来たわけではない」
 相変わらず炎山は、相手を見下した態度で答える。
「屋敷の調査…………ってまさか」
 熱斗は、炎山を見つめる。
オフシャルネットバトラーには、ネット犯罪を独自に捜査し、犯罪者を逮捕する権利が与えられている。オフシャル屈指のネットバトラーである炎山が、この屋敷の「調査」に来たということは…………。

「やっぱりネット犯罪だったのかよ、このお化け騒ぎは」
「貴様には関係のないこと。俺の仕事に首をつっこまないでもらおうか……。
 ブルース、プラグアウトするぞ」
『ハッ、炎山さま』
 熱斗を無視して、炎山はブルースを無線LAN装置からプラグアウトさせる。
『炎山さま、この無線LANに指令を送っていたホストコンピューターの割りだしが終了しました』
「場所を教えろ」
『この部屋の左隣3つ目にある台所の地下、ワインセラーです』
「よし、わかった。行くぞ」
 炎山は、熱斗に見向きもせずにこの部屋を出ようとする。
 
「おいっ、ちょっと待てよ炎山! 俺も行く!!」
 熱斗は、慌ててロックマンをプラグアウトさせると、炎山を呼び止めた。
「…………言ったはずだ、貴様には関係ない。俺の仕事に首をつっこむな、と」
炎山が突き放した口調で告げる。
「関係有るさ!」
 だが熱斗はそんなことも気にせず食い下がる。
「立体ホログラムのお化けで人を驚かせて、それを楽しんで見ているふざけたヤローのせいでデカオが怪我してしまったんだ。
 そいつの正体をこの目で確かめなきゃ、俺の気が済まないんだよ!」
『僕もだよ!』
 ロックマンも熱斗に同意する。
「とにかく、お前が何といおうが、俺も行くぞ炎山!!」
 熱斗の真剣な眼差しに、炎山はしばらく黙って見つめた。

 そして、
「………………勝手にしろ。ただし、俺の脚をひっぱるなよ」
と、表情を崩さないまま目でついてくるように、熱斗を促した。